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日本語古典文法

放大字体  缩小字体 发布日期:2010-12-13  来源:日本留学网  作者:日本留学网  浏览次数:495

目次
一、 活用型
1 四段活用
2 上二段活用
3 下二段活用
4 ラ行変格活用
5 ナ行変格活用

二、 助動詞
1 ぬ
2 む
3 なむ
4 らむ
5 り
6 き
7 けり
8 つ
9 しめる  ⇒ 使役
10 る・れる ⇒ 受身
11 らる・られる ⇒ 受身
12 ゆ ⇒ 受身
13 らゆ ⇒ 受身
14 なり
15 たり・1
16 たり・2

正文
一、活用型
【四段活用】
動詞活用の型の一つ。たとえば「書く」が、「書か・書き・書く・書け」のように変化するなど、その語形変化が主として語の最終音節の母音交替によって行われるもの。その変化が五十音図の一行でア・イ・ウ・エの四段にわたるところからの名称。ただし、已然形と命令形の語尾は同じエ段の音であるが、カ行・ハ行・マ行に活用するものは、上代ではエ段の甲乙両類に分かれていた。連用形には、音便形がある。この型に属する語は、文語では、全動詞中の六割に達するといわれ、活用はカ・ガ・サ・タ・ハ・バ・マ・ラの各行にわたる。口語では、ラ変、ナ変の動詞がこれに併合され、現代かなづかいでは、助動詞「う」の付いた形を「書こう・読もう」のように書くので、見かけ上、オ段にもわたるとして、「五段活用」ともいう。

【上二段活用】
文語動詞の活用の型の一つ。未然・連用形の語尾がイ段、終止・連体・已然形はウ段で、連体形は「る」、已然形は「れ」を添える。五十音図のイ段、ウ段の二段に活用するので、ウ段、エ段に活用する下二段活用に対していう。「起く」(き、き、く、くる、くれ、きよ)など。

【下二段活用】
文語動詞の活用の型の一つ。二段活用のうち、未然・連用形と終止形の活用語尾が、五十音図のエ段とウ段の二段に変化するもの。他の活用形では、連体・已然形は、ウ段にそれぞれ「る」「れ」が加えられ、命令形では、エ段に「よ」が加えられる。この型に属する動詞は、四段活用についで数が多く、活用の行としては、五十音図のすべての行に例がある。「得(う)」「寝(ぬ)」「経(ふ)」のように、語幹と活用語尾とを音節として分けられないものもある。文語下二段活用の動詞は、口語では下一段活用となる。

【ラ行変格活用】 
日本語の文語動詞の活用の型の一つ。語尾が「ら・り・り・る・れ・れ」と活用するもので、五十音図の四段にわたるが、終止形の語尾が四段活用と異なるところから「変格」と称する。イ段で終止する動詞はこの種類だけで、これに属する動詞は、「あり、おり、はべり、いますかり」などで、「あり」の複合した「かかり、さり、しかり」や「けり、たり、なり、り」などもこの活用。口語では、失われ、「ある、おる」は四段(五段)活用に転じている。ラ変。

【ナ行変格活用】 
日本語の文語動詞の活用の型の一つ。語尾が「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」と活用するもので、「去(い)ぬ・死ぬ」の二語だけがこれに属する。五十音のナ行のうち、ナ・ニ・ヌ・ネの四段にわたって活用するが、連体形・已然形の語尾が四段活用と異なるところから「変格」という。ナ変。

二、助動詞

〔助動〕(活用は【ナ行変格活用】「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」。用言の連用形に付く。完了の助動詞。動詞「往ぬ」の「い」が脱落したものといわれる)
1 動作・作用の発生または継続推移が完了したこと、終わった状態になること、またそれを確認する気持を表す。…するようになった。…してしまった。…してしまう。*古事記‐中・歌謡「畝火山木の葉さやぎ奴(ヌ)風吹かむとす」*土左「こしかひもなくわかれぬるかな」
2 動作・状態の実現・発生することを確言する気持を表す。きっと…する。…してしまう。今にも…しそうだ。多くの場合、下に推量の助動詞を伴う。また命令形を用いて、確実な実行を求める意を表す。*源氏‐若紫「宿世(すくせ)たがはば、海に入りね」*徒然草‐一三七「咲きぬべきほどの梢」
3 「…ぬ…ぬ」の形で、二つの動作が並列して行われていることを表す。→たり(完了の助動詞)。*浜松中納言‐四「かきくらし晴れせぬ雪の中にただ明けぬ暮れぬとながめてぞ経る」
補注 (1)「ぬ」は主として、意志を持った行為でない、無作為・自然に発生推移する動作作用を表す動詞に付き、「つ」と対照される。なお、また「ぬ」は自動詞に、「つ」は他動詞に付くという傾向のあることが近世以来認められている。(2)「ぬ」はナ行変格の動詞には付かないといわれているが、「死ぬ」については、中世、「今昔‐二・二九」の「其の詞(ことば)終らざるに、即ち、死にぬ」などの例がある。


〔助動〕(活用は【四段活用】「ま・〇・む・む・め・〇」。平安時代中期にはmuの発音がmとなり、さらにnに変わったので、「ん」とも書かれる。またmはZからuに転じて鎌倉時代には「う」を生み、やがてuの発音は前の語の末の母音と同化して長音化するようになった。活用語の未然形に付く。→う)推量の助動詞。現実に存在しない事態に対する不確実な予測を表す。
1 話し手自身の意志や希望を表す。…しよう。…するつもりだ。…したい。*古事記‐中・歌謡「撓(たわ)や腕(がひな)を枕(ま)か牟(ム)とは吾(あれ)はすれど」
2 相手や他人の行為を勧誘し、期待する意を表す。遠まわしの命令の意ともなる。…してくれ。…してもらいたい。*古事記‐下・歌謡「吾(あ)が愛(は)し妻にい及き逢は牟(ム)かも」
3 推量の意を表す。①目前にないこと。まだ実現していないことについて想像し、予想する意を表す。…だろう。*万葉‐三九九六「ほととぎす鳴か牟(ム)五月(さつき)はさぶしけ牟(ム)かも」②原因や事情などを推測する場合に用いる。…だろう。…なのであろう。*万葉‐六二一「間なく恋ふれにかあら牟(ム)草枕旅なる君が夢にし見ゆる」③(連体法に立って)断定を婉曲にし、仮定であること、直接経験でないことを表す。…であるような。…といわれる。…らしい。*古事記‐中・歌謡「命(いのち)の全(また)け牟(ム)人は」
補注 (1)原形をアムとする説がある。(2)未然形「ま」は、上代のいわゆるク語法の「まく」の形に現れるものだけである。(3)形容詞活用や助動詞「ず」には、「あり」を介して付くのが常であるが、上代では、形容詞活用にはその古い未然形語尾「け」に付く。(4)助動詞「けむ」は、もと過去の助動詞「き」の未然形にこの「む」が結合したもの。そのほか、「らむ」「まし」なども、この「む」に関係のあるものといわれる。

なむ
(完了の助動詞「ぬ」の未然形に推量の助動詞「む」の付いたもの。動詞の連用形に付く)
1 動作・状態の実現すること、完了することを確認し推測する意を表す。…するようになるだろう。…になってしまうだろう。きっと…だろう。*万葉‐八三「竜田山いつか越え奈武(ナム)妹があたり見む」
2 動作・状態を実現しようとする強い意志を表わす。きっと…しよう。*万葉‐三四八「虫に鳥にもわれは成り奈武(ナム)」
3 動作・状態の実現を適当であるとする、また、適当であるからそうした方がよいと勧誘する意を表す。…した方がよいだろう。…したらどうだろう。*源氏‐夕顔「はや帰らせ給なんと聞こゆれば」
4 動作・状態の実現を可能であると推量する意を表す。…することができるだろう。…でもかまわないだろう。*平家‐六「あの物射もとどめ、斬りもとどめなんや」

らむ
〔助動〕(活用は【四段活用】「〇・〇・らむ・らむ・らめ・〇」。終止形・連体形は、平安時代には「らん」とも書かれ、鎌倉時代には「らう」の形も現れる。活用語の終止形に付くのが原則であるが、ラ変型活用の語には連体形に付く。推量の助動詞)
1 話し手が実際に触れることのできないところで起こっている事態を推量する意を表す。現在の事態を想像していう例が多い。…であるだろう。今ごろは…しているだろう。*書紀‐白雉四年・歌謡「引出(で)せず我が飼ふ駒を人見つ羅武(ラム)か」
2 話し手が実際に経験している情況について、その原因・理由・時間・場所などを推量する意を表す。①原因など条件を表わす句を受けて、それを事実について推量する場合。*万葉‐二六四七「横雲の空ゆ引き越し遠みこそ目言(めこと)離(か)る良米(ラメ)絶ゆとへだてや」②疑問詞を受けて、事実の奥の条件を模索する場合。*万葉‐一九四八「ほととぎすいづくを家と鳴き渡る良武(ラム)」③現実の事柄に心を動かして、言外にその原因、理由などを疑う意を表す場合。*古今‐九三「春の色の至り至らぬ里はあらじ咲ける咲かざる花の見ゆらん」
3 連体修飾文節に用いられて、自分の直接経験ではないが、他から聞いたこと、世間一般で言われていることを受け入れて推量する意を表す。*万葉‐一一二「いにしへに恋ふ良武(ラム)鳥はほととぎす」*枕‐四一「鸚鵡、いとあはれなり。人のいふらんことをまねぶらんよ」
補注 (1)「らむ」の「む」の部分は、推量の助動詞「む」と同源と考えられる。「ら」は、動詞「あり」と関係づけて説かれ、また、状態を示す接尾語「ら」という説もあるが決しがたい。(2)上代、上一段活用の動詞「見る」に付くときは、「見らむ」となる。他の上一段動詞に「らむ」を伴った用例は見られない。「見らむ」は、中古にも用いられている。この接続は、「べし」の場合と同様のもので、「み」を連用形とするが、また古い終止形とか終止形の語尾を落としたものとか見る説もある。(3)鎌倉時代以降、「らう」の形があらわれ、現代の「ろう」に続くほか、方言では「ら」の形でも用いられる所がある。→ろう。(4)室町時代には「らん」は完了の「つ」と熟合し、「つらん」「つら」「つろう」となり過去の推量を表す。これらは現代の方言にまでつづき、口語の「たろう」に相当する。→つろう・つら・つろ


〔助動〕(活用は【ラ行変格活用】「ら・り・り・る・れ・れ」。四段、およびサ変動詞の命令形に付く。→補注)動詞連用形に「あり」を伴う語法で、熟合の結果「あり」の語尾の「り」が切り離された形で取り扱われるようになったもの。完了の助動詞。
1 動作・状態が現に継続し進行していることを表す。…ている。…てある。受ける動詞は、主として、持続的な動作作用を表すものである。*万葉‐八四六「霞立つ長き春日をかざせ例(レ)ど」
2 ある動作・作用によって変化した状態が存続していることを表す。…た。…ている。…てある。…ておく。受ける動詞は主として、比較的短時間に完了する変化を表すものである。*書紀‐応神一九年一月・歌謡「横臼に醸(か)め蘆(ル)大御酒(おほみき)」
3 動作・作用が完了した状態を確認する気持を表す。*土左「講師、むまのはなむけしにいでませり」
補注 (1)従来、四段動詞の已然形、サ変動詞の未然形に付くと説かれたが、上代特殊仮名遣の上では、助動詞「り」に接続する四段活用動詞語尾のエ列音は、甲類であって、通例乙類である已然形語尾とは異なるので、已然形と見ることは不適当で、これを、語尾が甲類である命令形に付くものと説くのが近年一般的である。サ変にも命令形に付くと説くことができる。ただし、この甲類のエ列音は、連用形語尾のiと「あり」の頭音aとの結合によって生じたもので、命令形語尾と同じ甲類ではあっても、直接に命令という機能にかかわりを持つわけではない。また、上代では、カ行上一段・カ変動詞についた例がある。その際、動詞の形は甲類の「け」であって、これも連用形「き」と「あり」との結合と見られる。「見まく欲り思ふ間に玉梓の使の来(け)礼(レ)ば」〔万葉‐三九五七〕など。助動詞の「けり」もまたこれと関連する。(2)ラ変動詞に付かないのは、「り」がもと「あり」であって、重複を避けたものと考えられるが、近代の文法では「居れり・異なれり」の用法がある。ただし、これらの「居り」「異なり」は四段活用化したものと認められる。(3)平安時代以後、意味が近く、接続が自由な「たり」に勢力をうばわれるようになり、鎌倉時代以後になると、終止・連体形以外は次第に衰退した。(4)鎌倉時代以後、下二段動詞などのエ列音に付く例がみられる。これは、四段・サ変への接続がいずれもエ列音であるところから、類推によって生じたものであろう。


〔助動〕(活用は「せ・○・き・し・しか・○」。用言および助動詞の連用形に付く。ただし、カ変には「こ‐し、こ‐しか、き‐し、き‐しか」の両様の付き方があり、サ変には「せ‐し、せ‐しか、し‐き」のように付く)過去の助動詞。過去の事実、自分の経験した事実について回想し、確定的に叙述する場合に用いる。→けり(助動詞)。*古事記‐中・歌謡「燃ゆる火の火中に立ちて問ひ斯(シ)君はも」*古今‐八六一「つひにゆく道とはかねてききしかどきのふけふとはおもはざりしを」\
補注 (1)未然形「せ」は、常に接続助詞「ば」に連なって「…せば」の形をとり、多くは「まし」と対応して、現実には存在しない事柄を仮想する条件句を作る。上代語、および中古の和歌に主として用いられる。「古事記‐中・歌謡」の「一つ松人にあり勢(セ)ば太刀(たち)佩(は)けましを」、「古今‐五三」の「世中にたえてさくらのなかりせば春の心はのどけからまし」など。なお、この「せ」は、古代日本語においてサ変動詞と関係があったとする説がある。(2)上代には、「常陸風土記‐香島・歌謡」の「あらさかの神の御酒をたげと言ひ祁(ケ)ばかもよ我が酔ひにけむ」、「古事記‐下・歌謡」の「根白の白腕(しろただむき)枕(ま)かず祁(ケ)ばこそ知らずとも言はめ」の「け」を「き」の未然形とする説がある。→助動詞「けむ」。(3)連体形「し」が、係結びの場合でなくて文の終わりに用いられることがある。「源氏‐夕顔」の「君は、御直衣姿にて、御随身どももありし」などは、「連体止」による詠嘆的表現、「徒然草‐三二」の「その人、ほどなく失せにけりと聞き侍りし」などのような中世以降の例は、口語動詞の連体形が終止形にとって代わったのと相応じて、単なる終止用法へと変化したものと考えられる。(4)後世では、「為忠集」の「我がそのの咲きし桜を見渡せば」のように、現在また完了(…ている)の意に用いられた例もみられる。(5)近世以降、サ行四段活用の動詞に付く場合、「…しし」とならないで「…せし」となる場合が多くなる。「仮・恨の介‐上」の「なかにもくずの恨の介と申せし人は」など。\

けり
〔助動〕(活用は【ラ行変格活用】「けら・〇・けり・ける・けれ・〇」。用言の連用形に付く。回想の助動詞「き」と「有り」、または「来(き)」と「有り」の結合したもの)過去・回想の助動詞。
1 ①ある事柄について前からし続け、あり続けて、今もあるという意を表わす。…てきた。…てきている。*万葉‐八九四「言霊の幸(さき)はふ国と語り継ぎ言ひ継がひ計理(ケリ)」②過去に存在した事実として述べる。助動詞「き」と対照的に、自己の体験でない事柄に用いられることが多い。*古事記‐中・歌謡「その鼓臼に立てて歌ひつつ醸み祁礼(ケレ)かも舞ひつつ醸み祁礼(ケレ)かも」③過去のある事柄を、現在までいい伝えられてきている事実として表わす。…たという。…たそうだ。…たとさ。*万葉‐一八〇七「古にあり家留(ケル)ことと今までに絶えず言ひける」
2 ①ある事態が以前から存在していたことにはじめて気づいた感動や驚き、またその原因、理由を納得する意を表わす。…ていたのだなあ。…たのだなあ。*古事記‐上・歌謡「白玉の君が装(よそひ)し貴くあり祁理(ケリ)」②事実を前にして詠嘆をこめて述べる。…たなあ。*古事記‐下・歌謡「老いに祁流(ケル)かも」③真理、真実の存在を詠嘆して述べる。…のであった。*仏足石歌「薬師(くすりし)は常のもあれど賓客(まらひと)の今の薬師貴かり家利(ケリ)」④未来の事柄を確認する意を詠嘆して述べる。*源氏‐乙女「式部卿宮、明けん年ぞ五十になり給ひける」
補注 (1)未然形「けら」は、上代だけに「けらずや」「けらく」の形で用いられる。→けらく。(2)連体形「ける」に助動詞「らし」が付いた「けるらし」の約という「けらし」がある。→けらし。(3)上代に限り、打消の助動詞に接続する場合「ずけり」の形をとった。(4)中世以後「けり」は強調した断定、詠嘆の意味として使われている。近代では、一般には「けりがつく」「人によりけり」など特別な慣用句中でしか用いない。


〔助動〕(活用は【下二段活用】「て・て・つ・つる・つれ・てよ」。用言の連用形に付く。動詞「棄(う)つ」の「う」が脱落したものといわれる)完了の助動詞。
1 ある行為が実現したこと、ある行為を実現させたこと、または動作、作用が完了したことに対する確認の気持を表す。…た。…てしまった。…てしまう。*古事記‐中・歌謡「新治(にひばり)筑波を過ぎて幾夜か寝都流(ツル)」*土左「かぢとり〈略〉おのれし酒をくらひつれば、はやくいなんとて」
2 動作・作用が完了したこと、またはある行為を実現させることに対する強い判断を表す。たしかに…する。ぜひ…する。きっと…する。*源氏‐帚木「悩ましきに、手ながら引き入れつべからん所を」\
3 ある事実に対する確認の気持を表す。…た。*万葉‐三〇「ささなみの志賀の辛崎幸くあれど大宮人の船待ちかね津(つ)」
4 「…つ…つ」の形で二つの動作が並列して行われていることを表す。並行の助詞、接続助詞ともされる。*平家‐三「僧都、乗ってはおりつ、おりてはのっつ、あらまし事をぞし給ひける」
補注 (1)意味上は助動詞「ぬ」とほぼ同様とみられるが、「つ」は有為的、作為的な動作を表す語につき、「ぬ」は自然的推移、無作為的な動作を表す語につく傾向がある。また、同一語に付いていても、「つ」は意志的、作為的、「ぬ」は自然推移的、無作為的な意を含むといわれる。(2)「方丈記」の「心、身の苦しみを知れれば、苦しむ時は休めつ、まめなれば使ふ」などは接続助詞として扱う説もある。(3)近世には「雨月物語‐菊花の約」の「薬をえらみ、自方を案じ、みづから煮てあたへつも、猶粥をすすめて、病を看ること同胞のごとく」など「つつ」とほぼ同意になった例も見られる。

しめる
〔助動〕(活用は【下一段活用】「しめ・しめ・しめる・しめる・しめれ・しめろ・しめよ」。活用語の未然形に付く)卆しむ(活用は「しめ・しめ・しむ・しむる・しむれ・しめよ」活用語の未然形に付く)
(1) 使役の助動詞。他にその動作をさせる意、またはそのように誘発する意を表す。…させる。*万葉‐四四九六「うらめしく君はもあるか宿の梅の散り過ぐるまで見之米(シメ)ずありける」
(2) 敬意を表す。
1 (尊敬を表す語の上に付いて)尊敬の意を強める。平安時代以後の用法。*宇津保‐俊蔭「帝大きに驚かせ給て、感ぜしめ聞こしめすこと限りなし」
2 (謙譲を表す語とともに用いて)謙譲の意を強める。…し申しあげる。*大鏡‐五「家貧ならん折は、御寺に申文を奉らしめんと」\
補注 (1)は上代から一般に用いられたが、平安時代には、男性語として、もっぱら漢文訓読系の文章に用いられるようになり、仮名文系の「す・さす」と対立するに至る。

る・れる
〔助動〕(活用は「れ・れ・れる・れる・れれ・れろ(れよ)」。下一段型活用。四(五)段活用動詞の未然形、およびサ変動詞未然形の「さ」に付く)卆る(活用は「れ・れ・る・るる・るれ・れよ」。下二段型活用。四段活用・ナ行、ラ行変格活用の動詞の未然形に付く)自発・受身・可能・尊敬の助動詞。
1 自発を表す。ある動作、主として心的作用が自然に無意識的に実現してしまうことを示す。命令形は用いられない。「放って置いたのが悔やまれる」*万葉‐三三七二「砂(まなご)なす児らは愛(かな)しく思は流留(ルル)かも」\
2 受身を表す。他から何らかの動作作用の影響を受ける意を表す。受身とともに迷惑や恩恵をこうむっている気持を、合わせて表現することが多い。「車にひかれる」「親に死なれる」*万葉‐八九四「唐(もろこし)の遠き境につかはさ礼(レ)」
3 可能を表す。…することができる。古代は、否定の表現を伴って不可能の意を表すのに用いられるのが普通であったが、中世末以降、打消を伴わないで可能の意を表すようになる。命令形は用いられない。「行こうと思えばいつでも行かれる」*万葉‐四三二二「影(かご)さへ見えて世に忘ら礼(レ)ず」\
4 尊敬を表わす。他人の動作を表す語に付いて、敬意を示す。「給う」などよりは軽いといわれる。中古以降の用法で、中古の漢文訓読、中古末の和漢混淆文などに例が多いが、かな文学作品では比較的少ない。「いつ行かれますか」*落窪‐一「これはいつよりもよく縫はれよ」
補注 (1)「られる(らる)」と意味・用法は等しいが、未然形がア段となる動詞には「れる(る)」が付き、それ以外の場合は「られる(らる)」が付く、というように、接続に分担がある。(2)上代では、「ゆ」の形をとることが多く、「る」は中古以降に多く用いられるようになる。中世には連体形「るる」が終止法として用いられるようになり、命令形には「れい」が現れ、やがて一段活用化して「れる」となる。(3)自発・受身・可能・尊敬の意味は、推移的に変化しているため、個々の用例においては、いずれと決めにくい場合がある。(4)「られる(らる)・れる(る)」の受身は、英語などの受身と異なり、単純な他動詞ばかりでなく、「肩を叩かれる」「酒を飲まれる」のように目的語を伴った他動詞に付く場合、また、「雨に降られる」のように、自動詞に付く場合もある。なお、「迷惑の受身」などと呼ばれるものは、自動詞に付いた場合が多い。(5)主語が無生物の受身表現は、特に明治以後の翻訳の影響などによって増加し、現在では、客観的な叙述に多く用いられる。(6)サ変動詞に付く場合には、「愛される」のように、語尾「さ」に続くのが普通であるが、古くは、「愛せられる」「愛しられる」のように「せ」「し」に「られる」が付いた。(7)助動詞としないで接尾語とする説もある。

らる・られる
〔助動〕(活用は「られ・られ・られる・られる・られれ・られろ(られよ)」。下一段型活用。上一段・下一段活用、カ変・サ変活用の動詞、および使役の助動詞「せる」「させる」の未然形に付く)卆らる(活用は「られ・られ・らる・らるる・らるれ・られよ」。下二段型活用。上一段・下一段活用・上二段・下二段活用、カ変・サ変活用の動詞、および使役の助動詞「す」「さす」の未然形に付く)
1 自発を表す。ある動作、主として心的作用が自然に、無意識的に実現してしまうことを示す。命令形は用いられない。*源氏‐帚木「自然(じねん)に心をさめらるるやうになむ侍りし」\
2 受身を表す。他から何らかの動作・作用の影響を受ける意を表す。作用の受け手、すなわち受身形の主語は、人間・動物など有情のものであるのが普通である。動作を直接に受け、またその影響をこうむることによって、被害や迷惑、または恩恵などを受ける感じをも含むことが多い。ふつう、動作・作用の行い手は、「…に」の形で表現される。*枕‐七五「ありがたきもの、舅(しうと)にほめられる婿(むこ)」\
3 可能を表わす。ある動作をすることができる意を表す。古代には、否定の表現を伴って不可能の意を表すのに用いられるのが普通で、中世末以降、打消を伴わないで可能の意を表すのにも用いられる。命令形は用いられない。*源氏‐須磨「二千里の外、故人の心と誦じ給へる、例の涙もとどめられず」
4 尊敬を表す。他人の動作を表すの語に付いて、敬意を示す。「給ふ」などよりは軽いといわれる。中古には漢文訓読の際のことばなどには多用されるが、かな文学作品の中では比較的少なく、中古末の和漢混淆文などに多く見られる。*大鏡‐六「げに女房のからきことにせらるれども」*平家‐二「入道みづから中門の廊にぞ出でられたり」
補注 (1)「れる(る)」と意味・用法は等しいが、未然形がア段となる動詞には「れる(る)」が付き、それ以外の場合は「られる(らる)」が付くというように、接続に分担がある。(2)上代では、「らゆ」という形が用いられて、「らる」は見出せない。中世には連体形「らるる」が終止法として用いられるようになり、命令形には「られい」が現れ、やがて一段活用化して「られる」となる。(3)自発・受身・可能・尊敬の意味は、推移的に変化しているため、個々の用例においては、いずれと決めにくい場合がある。(4)「られる(らる)・れる(る)」の受身は、英語などの受身と異なり、単純な他動詞ばかりでなく、「目をかけられる」のように目的語を伴った他動詞に付く場合、また、「人に逃げられる」のように自動詞に付く場合もある。「迷惑の受身」などといわれるものは自動詞に付いた場合に多い。(5)主語が無生物の受身表現は、特に明治以後の翻訳の影響などによって増加し、現在では、法律、学術書をはじめとして新聞記事、ニュース放送など客観的な叙述に多く用いられる。(6)動詞の活用語尾に準ずるものとして接尾語とする説もある。


〔助動〕(活用は「え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・○」。四段・ラ変動詞の未然形に付く)自発・受身・可能の助動詞。中古の「る」に当たる。
1 自発。ある動作が自然に行われること、無意識的にある行為をしてしまうことを表す。*万葉‐三七三二「ぬば玉の夜はすがらにねのみし泣か由(ユ)」\
2 受身。他から動作を受ける意を表す。動作の受け手(「ゆ」が付いた動詞に対する主語)は、人間・動物など有情のものであるのがふつうで、また、その動作を受けることによって、被害や迷惑、または恩恵などを受ける意味をも含むことが多い。動作の行い手は、「…に」の形で表現される例が多い。*万葉‐八〇四「か行けば人に厭(いと)は延(エ)かく行けば人に憎ま延(エ)」\
3 (打消の助動詞を伴って)不可能の意を表す。*書紀‐斉明四年一〇月・歌謡「おもしろき今城のうちは忘ら(ユ)ましじ」
補注 (1)「らゆ」とともに、中古以降の「る」―「らる」に対応する。ただし、上代にも「る」の例は少数ある。命令形は現れない。(2)語源上、「見ゆ、燃ゆ、消ゆ、絶ゆ」など、いわゆる他動詞を対応形にもつヤ行下二段動詞の語尾と同じもので、作用を自然に発動する変化またはその状態としてとらえるのが原義と考えられる。それが、「見ゆ」にも「人に見ゆ」などの用法のあるように、受身の意味を明らかにするために用いられた。(3)四段活用動詞の未然形に付くものを助動詞として取り扱うが、「思ふ」、「聞く」に付いた場合のように、早く「思ほゆ」(さらに「おぼゆ」)、「聞こゆ」となって、一動詞の語尾として扱われるものがある。(4)上一段活用動詞「射る」について、「射ゆ」の受身用法の例があり、「見ゆ」と考え合わせると、古くは上一段動詞にも「ゆ」が付いたと見られる。(5)中古には、漢文訓読に「地蔵十輪経元慶七年点‐七」の「当来に有ら所(エ)む罪咎を防護すべし」のように、多少引き継がれ、また、「あらゆる」「いはゆる」のように連体詞として固定したものが後世まで用いられたほかは、一般に「る」に代わった。

らゆ
〔助動〕(活用は「らえ・○・○・らゆる・○・○」。下二段活用。下二段動詞の未然形に付く。可能の助動詞)否定の表現を伴って、不可能の意を表す。*万葉‐三六六五「妹を思ひいの寝良延(ラエ)ぬに」\
補注 四段動詞に付く「ゆ」とともに、「ゆ」‐「らゆ」の組をなして、「る」‐「らる」の組に対応する。上代では下二段動詞「寝(ぬ・いぬ)」に付いた未然形の例しか見られない。

なり
(格助詞「に」に動詞「あり」の付いた「にあり」の変化。活用は「なら・なり、に・なり・なる・なれ・なれ」。用言・助動詞の連体形や、名詞・副詞などに付く。断定の助動詞)
1 場所や方角などを表す名詞に付いて、その場所に存在している意を表す。…に在る。中古以降では、主として連体形だけが用いられる。*万葉‐三六八六「旅奈礼(ナレ)ば思ひ絶えてもありつれど家にある妹(いも)し思ひ悲しも」*源氏‐夕顔「この西なる家はなに人の住むぞ」\
2 ある事物に関して、その種類・性質・状態・原因・理由などを説明し断定することを表す。…である。上代では、名詞またはこれに準ずる語に付くが、中古以降、用言・助動詞の連体形や句末などにも付くようになる。*古事記‐中・歌謡「この御酒(みき)は我が御酒那良(ナラ)ず」*古今‐仮名序「心に思ふことを見るもの聞くものにつけて言ひ出だせるなり」*土左「都へと思ふをものの悲しきは帰らぬ人のあればなりけり」\
3 ある名を持つことを表す。連体形だけが用いられ、江戸時代の漢文訓読に始まる語法という。…という名の。*俳・おらが春‐四山人跋「此の一巻や、しなのの俳諧寺一茶なるものの草稿にして」
4 金額の切れ目を示す。証書や帳簿で金額を書くのに「一金壱百万円也」のように「也」字を用いて、以下の端数のないことを示し、また、珠算の読みあげ算で一項の数値ごとに付けて句切りを明らかにする。
補注 (1)(1)の意味については、近世以来、詠嘆としてとらえられてきたが、近年、「伝聞推定」と説くのが一般である。(2)(1)の「なり」と(2)の「なり」とは、接続形式を異にするほか、各活用形の用法や他語との呼応にちがった傾向が見られ、また上代の漢字表記では、断定の「なり」に用いられる「在・有」などが、伝聞推定の「なり」に用いられず、逆に断定の「なり」には用いない「鳴」などが伝聞推定の「なり」に用いられている。(3)(1)の「なり」がラ変型活用語に付く時は、上代では「ありなり」のように終止形に付くが、中古の用例はほとんど「あなり」と書かれている。これは、音便化した「あんなり」の「ん」が表記されなかったものである。この「あん」は従来、連体形「ある」の音便化したものと考えられていたが、「あるなり」と書かれた確証に乏しい。ただし、後世には、連体形に接する例もあらわれてくる。(4)中古では、(2)の「なり」に「めり」「なり」などが付く時は、他のラ変型の活用語と同じく、「なンめり」「なンなり」と撥音便化する。ただしこの撥音は表記されないことが多い。(5)(2)の未然形「なら」が、「ば」を伴わないで仮定条件を表す用法は、近世初期以降の口語にあらわれる。また、連体形「なる」が「な」に転じて、室町以降の口語で、終止法・連体法に用いられる。

たり・1
〔助動〕(活用は「たら・たり、と・たり・たる・たれ・たれ」(ラ変型活用)。体言に付く。格助詞「と」に動詞「あり」の接した「とあり」の変化)断定の助動詞。事物の資格をはっきりとさし示す意を表す。…である。*西大寺本金光明最勝王経平安初期点‐七「現の閻羅の長姉たりと、常に青色の野蚕の衣を著たり」*蜻蛉‐下「兄(せうと)たる人、ほかよりきて」*平家‐一「忠盛備前守たりし時」
補注 平安朝の和文にはほとんど例がなく、漢文訓読文にもっぱら用いられた。中世以後は和漢混交文、抄物などに現れるが、室町中期以後はまれになり、江戸時代にかけて「何たる」のような複合語の用例に限定される。なお江戸前期の上方文学では、「何たる」のほかに「親たる人」のように、身分を表す名詞に付くものがほとんどである。ただし明治以後の文語文にはまた例が見える。

たり・2
〔助動〕(活用は「たら・たり・たり・たる・たれ・たれ」(ラ変型活用)。動詞型活用の連用形に付く。接続助詞「て」に動詞「あり」の接した「てあり」の変化)完了の助動詞。
1 動作・状態の存続すること、または動作の結果の存続することに対する確認の気持を表す。…ている。…ておく。*万葉‐三九一〇「楝(あふち)を家に植ゑ多良(タラ)ば」\
2 動作・作用が完了したことを確認する気持を表す。…た。*拾遺‐八二二「たたくとて宿の妻戸をあけたれば人もこずゑのくひななりけり」\
3 未来の事柄の実現に対する強い判断をあらわす。きっと…する。必ず…するものだ。*今昔‐一三・六「弥(いよいよ)信を凝(こら)して彼の持者を供養せば、三世の諸仏を供養せむよりは勝れたり」
4 ⇒副助詞「たり」
5 (終助詞的用法)命令、勧誘の意を表す。*滑・浮世床‐初「気障な話は止たり止たり」\
補注 (1)「たり」の原形は「万葉‐八九七」の「老いに弖阿留(テアル)吾が身の上に病(やまひ)をと加え弖阿礼(テアレ)ば」などの「てあり」であるが、その「て」については、接続助詞とするほか、助動詞「つ」の連用形が接続助詞に転じたもの、また「つ」の連用形そのものとする説がある。(2)中古の「たなり」「ためり」は、「なり」「めり」が「たり」の終止形(一説に連体形)の撥音便形「た(ン)」を受けているものを表す。中世には「き」「けり」に続く場合「たっし」「たっける」のように促音便形「たっ」が用いられた。(3)バ行マ行の動詞が「たり」を伴うとき、動詞の語尾が撥音便化またはウ音便化するとともに、「たり」が「だり」となることが多い。(4)並列を表す「…たり…たり」は、「…ぬ…ぬ」が文語的であるのに対して、口語として長く用いられ、固定化したものは助詞として扱われる。その固定するまでの例として、「平治‐中」の「大の男の、大鎧はきたり、馬は大きなり、乗りわづらふうへ」のような中止用法が、中世以後に多くみられる。(5)命令形「たれ」は古くは用いられたが、中世以降は衰え、それに代わってもとの形「てあれ」が復活。連体形「たる」の「る」は鎌倉時代から脱落の傾向を生じて「た」となり、現代の口語の助動詞「た」の終止・連体形となる。

 

 

 







 
 
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